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最高裁判所第二小法廷 昭和55年(行ツ)52号 判決 1981年1月19日

大阪市東成区大今里西二丁目一三番二一号

上告人

末松正行

大阪市東成区東小橋二丁目一番七号

被上告人

東成税務署長

山田康司

右指定代理人

山田雅夫

右当事者間の大阪高等裁判所昭和五四年(行コ)第四五号所得税決定無効確認請求事件について、同裁判所が昭和五五年二月一九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものであって、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮崎梧一 裁判官 栗本一夫 裁判官 木下忠良 裁判官 塚本重頼 裁判官 監野宣慶)

(昭和五五年行ツ第五二号 上告人 末松正行)

上告人の上告理由

一 上告人が本件譲渡土地を譲渡して、本件取得土地を取得したのは、共栄建設が多数人所有地を一団として宅地造成し、費用を土地の一部から捻出して従前土地所有者に従前地を区画したにすぎない。このことを、原審は、所得税法第三三条一項に当るとしたのは、同法の解釈、適用を誤ったものである。

多数人所有地を各別に宅地造成することよりも、一団として宅地造成し従前各面積に応じて区画することは社会経済的に理にかなった方法である。土地区画整理法の立法趣旨の一つもこゝにある。本件の工事と交換(換地)は同法の趣旨にそった私的契約により行われたものであって、同法による「譲渡がなかったものとみなす」と考えるべきものである。

原審は本件両土地は場所を異にするから資産の譲渡に当るというが、多数人所有地を一団として開発し、道路を配して宅地を区画するときは、両者一致すること自体物理的にも不可能というものである。場所を異にするから譲渡に当ると考えることは、ことの実質を見ない判断である。上告人は本件譲渡土地(形式上)し、本件取得土地を取得(形式上)するに当って、資産を譲渡するという意見を毛頭持っていなかったものである。上告人は従前地を一部土地を費用にあてゝ宅地化したにすぎないのである。

二 原審が本件に対して、所得税法第三三条一項を適用することを相当と判断したのは、本件譲渡土地が非宅地で本件取得土地が造成された宅地であるため、両者が価額的に大差があるものとの誤った判断から導かれたものと思われる。本件は造成工事が行われたことにより宅地化されたために価値的に増大したものであって、低価地を譲渡して高価地を取得したとみるのは誤りである。土地譲渡による譲渡所得税の課税は、本件取得土地を売却されたとき、売渡代金から従前地取得価額を控除した利益(所得)に対して行われゝば十分である。これが本来あるべき課税の姿である。従前地取得価額と宅地 された土地との価額差が原審をして誤った判断をさせたものである。

三 上告人以外の同じ関係にある土地取得者に対して課税されていないことゝ比べて、本件は行政上不平等扱いをしたもので、憲法第一四条の平等の原則に反するものである。

原審は「本件原案のような交換においては課税されないことが例となっていない限り」平等の原則に反しないと判示しているが、原審は勿論一審においても「課税の取扱い」について全く審理が行われていない。審理不尽である。

平等の原則に反した課税であるかどうかは、この取扱いについて審理して後結論づけられなければならない。

以上

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